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2010年10月12日 (火)

「ラファエル前派からウィリアム・モリスへ」展@いわき市立美術館

今回の記事は、福島県いわき市の市立美術館で開催されている「ラファエル前派からウィリアム・モリスへ」展について。

いわき市立美術館へ

特急スーパーひたちの写真

上野から常磐線特急「スーパーひたち」でいわきへ。

この特急に乗るのは初めてだ。いわきまで2時間10分ほど。

いわき駅前の写真

いわき駅前には、小さめの駅ビルと、LATOV(ラトブ)という公共/商業複合ビルと、いくつかの商店がある。

あまり大きな町ではない感じ。

いわき市美術館の写真

駅から歩いて15分ぐらいのところに美術館がある。

立派な美術館だ。

土曜午後だったが、観客は少なくて、空いていた。

ラファエル前派とは

この展覧会のテーマとなっている「ラファエル前派」というのは、これまであまりよく知らなかったのだが、参考文献を総合すると、大体以下のようなことらしい。

  • 19世紀後半のイギリス(ビクトリア朝時代)の芸術家たちのグループ。

  • ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ、ウィリアム・ホルマン・ハント、ジョン・エヴァレット・ミレイの3人の画家によって始められた。のちにエドワード・バーン=ジョーンズ、ウィリアム・モリスなど様々な芸術家たちが加わる。

  • 当時イギリスは産業革命で近代化し、人々は精神的な豊かさが失われていることへの不安感を抱き始めていた。そんな中、批評家ジョン・ラスキンは、芸術家と職人とが分離しておらず、人々が日々の労働の中に創造の喜びを見出していた中世を理想に掲げた。

  • ラファエル前派は、ラスキンの思想に支えられ、ラファエロ以前の、中世・初期ルネッサンスの美術への回帰を目指した。

  • ラファエル前派には様々な芸術家が参加し、それぞれの作品を残し、また去っていった。ラファエル前派とは何かという線引きは難しい。その芸術家たちは後に、アーツ&クラフツ運動、唯美主義、象徴主義へと展開して行った。

以下に、この展覧会でよかったと思った作品を3つとりあげることにする。

ウイリアム・ホルマン・ハント作「キリストと二人のマリア」

ウイリアム・ホルマン・ハント作「キリストと二人のマリア」の図版

ウイリアム・ホルマン・ハントは、ラファエル前派の思想に最後まで忠実であった、との解説なのだが ... どこいらへんが「ラファエル前」なのか、よくわからない。遠景の色彩なんかは印象派っぽい感じがする。

典拠は新約聖書のマタイによる福音書の28章にあるという。

イエス・キリストが磔刑ののち墓に葬られた3日後、二人のマリア(マグダラのマリアとヤコブ・ヨセフの母マリア)が墓を訪れると、天使からイエス・キリストがよみがえったと知らされる。二人のマリアは急いで弟子たちに知らせるために走って行った。すると...

すると、イエスが行く手に立っていて、「おはよう」と言われたので、婦人たちは近寄り、イエスの足を抱き、その前にひれ伏した。
イエスは言われた。「恐れることはない。行って、わたしの兄弟たちにガリラヤへ行くように言いなさい。そこでわたしに会うことになる。」
《新約聖書 マタイによる福音書 28.9~28.10》

こののち、イエス・キリストはガリラヤで弟子たちに会い、教えを世界に伝道するようにと命じたという。

モリス商会製「東方三博士の礼拝」

モリス商会製「東方三博士の礼拝」の図版

縦約2.5m横約3.7mの大きな壁掛け用タペストリーである。エドワード・バーン=ジョーンズがデザインし、ウィリアム・モリスの会社で製作されたものであるという。

ウィリアム・モリスは純粋美術と装飾美術の一体化を目指し、会社を設立して職人・アーチストを雇い、こういったタペストリーやステンドグラス、家具などを製作していたという。

内容はキリスト教会絵画ではとても多く見受けられる主題だと思う。イエス・キリスト降誕ののち、東方から占星術の学者たちが、ユダヤの王の星が輝くのを見たと言って、やってきて、イエス・キリストのもとにたどり着くと、ひれ伏して拝み、黄金と乳香と没薬を贈り物として献げたという。

真ん中にいる天使が手にしているのが、その星ということなのではないかと思う。右側の3人が博士たちで、それぞれに贈り物を手にしている。聖母マリアの後ろに立っているのは夫の聖ヨセフだろうと思う。

中世的な感じも受けるが、一方で登場者の顔立ち・容姿はずいぶん現代的にエレガントな感じがする。

周囲の風景がちょっと不思議で、森の中のような場所になっている。草花の描写が緻密で、その部分はジョン・ヘンリー・ダールという作家のデザインによるものだそうだ。花には、多分、それなりに意味があるのではないかと思うのだが ... ところどころに聖母の純潔を表すユリの花、そして聖母マリアの背後には聖母の象徴とされるバラの花が描かれているのがわかる。それ以外にも何種類かあるが、花の知識が無いもので、よくわからない。

フレデリック・サンズ作「エジプト女王ベレニケ」

フレデリック・サンズ作「エジプト女王ベレニケ」の図版

フレデリック・サンズは、ラファエル前派でも後のほうの世代の画家で、当時本や雑誌のイラストレーションの分野を代表する画家だったという。

色彩のきれいな絵だと思う。

主題は、どういう典拠なのかよくわからないのだが、プトレマイオス朝のエジプトの女王の伝説を描いたものだそうだ。ウィキペディアの「ベレニケ2世」のページに、その伝説が記述されている。

参考文献

この記事を書くにあたり、以下の本/Webサイトに掲載されている情報を参考にさせていただいた。

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