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2010年8月 1日 (日)

ディオニュソスとアリアドネ

名古屋市博物館で開催されているポンペイ展で見た、「ディオニュソスとアリアドネ」(ラテン名的には「バッコスとアリアドネ」)のフレスコ画がよかったので、 この機会に、この主題について調べてみた。

登場者

このフレスコ画の主な登場者の名前を書くと、下の図のようになると思う (後ろのほうの登場者は、よくわからないので、あまり確かではないが...)。

ディオニュソスとアリアドネ

ディオニュソス:お酒(葡萄酒)の神様。多くの信者を従える人気者。この絵はちょうどディオニュソスがアリアドネのもとへ飛来したところ。頭には葡萄の葉の冠をかぶり、手にはテュルソスと呼ばれる杖を持っている。

アリアドネ:クレタ王国の王女。寝ているうちに置き去りにされてしまった。

ヒュプノス:眠りの神。手にお皿のようなものを持っているように見えるが、これはたぶん、ヒュプノスは忘却の川(レテ川)の水に浸した枝で眠っている者の頭を撫でると言われているので、その川の水を入れた皿ではないかと思う。

シレノス:田園の神。酔っぱらいの老人で、知恵と予知能力を持つという。ディオニュソスに葡萄酒の作り方を教えたのもシレノスであると言われている。

パン:牧羊の神。半分山羊のような姿をしている。好色な神様で、よく女の子を追いかけまわしているという。アリアドネを見て驚いたような仕草をしている。

サテュロス:野山の精霊たち。ディオニュソスに付き従い、飲んだり、踊ったり、ふざけたりしている連中。

マエナス:ディオニュソスの信者の女たち。彼女たちもディオニュソスに付き従い、よく酒を飲んでは狂乱しているという。

クピド:英語風に発音するとキューピッド。愛の神。ディオニュソスにアリアドネを見せような仕草をしているのは、つまり、ディオニュソスにアリアドネへの愛がもたらされるということだと思う。

物語のあらすじ

アリアドネはクレタ王ミノスとその妃パシパエの娘。 パシパエはまた、ミノタウロスを生んだ女性でもある。 ディオニュソスとアリアドネの話はミノタウロス退治に続く話である。そこからの話も含めて、物語のあらすじを以下にまとめた。

ミノタウロスの出自

ミノスはポセイドンから、後で返すという約束で、美しい牡牛を得た。 しかし、ミノスは約束に反して、牡牛を返さなかった。 怒ったポセイドンは、パシパエに呪いをかけ、牡牛に対して欲情を抱かせた。 パシパエは牡牛と交わり、半牛半人の怪物ミノタウロスを生んだ。

ミノスはクノソス宮殿の地下にラビュリントスと呼ばれる迷宮を作り、そこにミノタウロスを閉じ込めていた。

テセウスのミノタウロス退治

ミノスはアテナイとの戦争に勝って以来、毎年若い男女を7人づつ、ミノタウロスへの生贄として差し出すよう、アテナイに強いていた。 アテナイの王子テセウスは、自ら進んで生贄となること申し出て、クレタに連れてこられた。その際テセウスはアフロディテに加護を求めた。

アリアドネが連れてこられたテセウスを見たとき、アフロディテは彼女がテセウスに恋をするよう仕向けた。 そしてアリアドネは、自分と結婚することを条件に、テセウスにミノタウロスを討つための刀と、迷宮の道案内となる糸玉を与えた。 その糸の端を迷宮の入り口に結びつけておくと、糸玉はころころと転がって、ミノタウロスの居る一番奥の部屋へと達した。 テセウスは、ミノタウロスをアリアドネにもらった剣で討つと、糸をたどって来た道を戻り、迷宮から抜け出ることができた。

ナクソス島に置き去りにされるアリアドネ

その夜、テセウスはアリアドネはを連れて、クレタを船で脱出した。

数日後、船はナクソス島(ディア島)に寄港した。 アリアドネが船を下りて島で眠っている間に、テセウスは彼女を置き去りにしたまま船出してしまった。 何故彼がそんなことをしたのかは謎である:新しい恋人ができたとも、アテナイでクレタの王女を連れ帰ったことを批判されるのを恐れためとも、 ディオニュソスの魔法にかけられたためとも言われる。

ディオニュソスとアリアドネの結婚

置き去りにされたアリアドネのもとに、ディオニュソスがサテュロスやマエナスたちを伴ってやってきた。 ディオニュソスは寝ているアリアドネの美しさに驚いた。 アリアドネは、目が覚めると、テセウスに置き去りにされたことを嘆き悲しんだ。 ディオニュソスはそんなアリアドネを慰め、彼女に結婚を申し込んだ。

こうしてディオニュソスとアリアドネは結ばれ、二人の間にはたくさんの子供ができた。

名前の表記

ギリシャ神話について書いたり調べたりするときに、結構困るのが、名前の表記だと思う。

ディオニュソスというのはギリシャ神話での名前で、ローマ神話ではバッコスと言うらしい。また、クピドというのはローマ神話での名前で、ギリシャ神話ではエロスと言うらしい。

また、カタカナの表記は、微妙に違ういろいろなものがあるようで、それがまた、キーワード検索したりするときに困るところ。 例えばWikipediaでは、「マエナス」でサーチすると出てこないが、「マイナス」でサーチすると出てくる。

今回の記事を書くにあたり、本やWebで見たいろいろな表記を下記の表にまとめた。 太字で書いてあるのは「西洋美術解読事典」の表記、リンクが張ってあるところはWikipediaのページへリンクしている。 アルファベットで書いてあるのは英語での綴り。

展覧会カタログの表記 ギリシャ神話 ローマ神話
ディオニュソス ディオニュソス、ディオニューソス、デオニュソス
Dionysus, Dionysos
バッコスバックス、バッカス
Bacchus
アリアドネ アリアドネアリアドネー
Ariadne
ヒュプノス ヒュプノス
Hypnos, Hypnus
ソムヌス
Somnus
シレノス シレノスシーレーノス
Silenus
パン パンパーン
Pan
ファウヌス
Faunus
サテュロス サテュロス
satyr
マエナス マイナス、マエナス
Maenad
クピド エロス、エロース
Eros
クピドクピードー、キューピッド
Cupid
アモル

この記事では、展覧会カタログの表記に従うことにしている。

まとめ

「ディオニュソスとアリアドネ」の話は、アリアドネがなぜ置き去りにされてしまったのかが謎だが、悲しみにくれるアリアドネをディオニュソスの愛が救うという、幸せな物語だと思う。 ディオニュソが様々な従者を連れているのも、にぎやかで楽しい。

つらいことがあっても、神様が救ってくれて、幸せになれることもあるのかなと、思わせてくれる感じがする。

参考文献

この記事を書くにあたり、以下の本・Webサイトを参考にさせていただいた。

  • 日本テレビ放送網発行「ポンペイ展 世界遺産 古代ローマ文明の奇跡 カタログ」
  • ロバート・グレイヴズ著、高杉一郎訳「ギリシア神話」
  • ジェイムズ・ホール著、高階秀爾監修「西洋美術解読事典」
  • THEOI GREEK MYTHOLOGY http://www.theoi.com/
  • ウィキペディア http://ja.wikipedia.org/

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